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りんごポリフェノール

長寿のための食品として注目されるりんごポリフェノール

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元気で長生きするための成分として期待されているりんごポリフェノール。
その効果と役割について、抗加齢研究の第一人者である
千葉大学大学院医学研究院 清水孝彦先生に聞いてみました。

時代は「治療から予防へ」

 医学は今、新しいテーマに向けて歩み始めています。近年、医学は目覚ましい進歩を遂げ、多くの病気が解明され、それに対する良い治療薬も開発されています。現在、薬で治療することができないのは、変性疾患※1など原因すらわからない病気です。たとえば、変形性関節症。これは物理的に関節が摩耗することによって起こり、年を重ねると患者は増えますが、全員に起こるわけではなく、確定的な原因はわかっていません。グルコサミンが薬として使われていますが、効果は限定的です。そして、アルツハイマー病。これも原因がわからず、年を重ねると増えます。対処薬のアリセプトが使われていますが、根本治療ではありません。いずれの病気も加齢とともに発症する老化現象の一種といえます。

 治療法がないのなら、未然に予防してできるだけ発症を遅らせることが重要です。アルツハイマー病予防には、野菜や青魚を積極的に食べるのが良いということはわかってきています。しかし、予防するための最大の方法は、健康寿命を延ばすことなのです。健康寿命が延びれば発症も遅らせることができるからです。

 寿命を決めるのは生活習慣など環境的要因もありますが、実は遺伝子も大きく関係しています。遺伝子には寿命を延ばす働きのある遺伝子があります。からだの中で発生する活性酸素を消すSOD※2という酵素も、遺伝子から作られています。活性酸素は常に体内で発生していますが、長年の間に障害が蓄積して、老化を促進したり、ガンなどの病気の原因となります。

生きるために欠かせない酵素

 では、どうすれば健康寿命を延ばすことができるのでしょうか。インスリンの受容体に変異があり、健康寿命が2倍から3倍に延びてしまう線虫がいます。長寿の理由は研究中ですが、活性酸素を消去するMn-SOD※3という酵素も増えており、寿命延長に関わっています。

 Mn-SODは下等生物から高等生物に広く存在し、体中の細胞のミトコンドリアに分布しています。この酵素が全身で欠損している研究用のマウスは、生まれてすぐに死んでしまいます。ただ、早く死んでしまうと研究できないので、私たちは組織や臓器だけで部分的にMn-SOD酵素が欠損しているマウスを作りました。そのひとつが心臓に欠損している心筋特異的Mn-SOD欠損マウスです。心臓にMn-SODがないので心臓で酸化反応がどんどん進み、最後は拡張型の心筋症になり、半年ですべてのマウスが死んでしまいます。このマウスに何かを与えて半年以上生きていれば、それには抗酸化力があり、心臓でMn-SODと同じような働きをしているということがわかります。

 SOD模倣物質(EUK8)を注射すると確かにこのマウスの寿命が延びることはわかっていましたが、実験を始める前は、食品を餌として与えて寿命延長効果が見られるかは懐疑的でした。食品で最初に試したのがりんごポリフェノールです。主成分はプロシアニジンで、抗酸化力があるので、効くことは考えられます。ただ、抗酸化力があっても、口から摂取すると途中で分解されて臓器や細胞まで達しなかったりするものもあります。実験結果は、有意に寿命が延び、心臓での保護効果が確認できたのです。

安全で効果が期待できるりんごポリフェノール

 りんごポリフェノールが良いと思うのは、それがりんご由来だからです。りんごは世界中で栽培され、世界中で流通し、日本ではどこのスーパーでも売っています。そして、何より安価に手に入る食材です。その中にそういう物質が含まれていることに大きな意味があります。人間が飲んだ場合も、抗酸化酵素の役割を補填できる可能性があります。たとえば、抗酸化酵素が弱ってきた人。このような人が摂取すると効果が期待できるでしょう。

 抗酸化力が強くても、安全性が担保されていない食材は注意が必要です。りんごは長い間、人類が食べてきた食材で長い食経験が安全性を証明しています。だから、病気の前から習慣的に摂取して未然に病気になるのを防ぐことが期待できるのです。

 りんごポリフェノールはりんごの中に非常に多く含まれており、りんごを食べると自然に体に入ってきます。りんごにはカリウムや食物繊維も豊富で、血圧を下げる作用や便通がよくなる作用もあります。ただ、糖尿病の人は果糖を取りすぎるとよくないということもあり、果物を食べることは、人それぞれで注意が必要になります。人間の場合、1日3個食べれば、マウスの実験と同じくらいの量となります。食べられないことはないですが、毎日食べるのは大変ですので、サプリメントで摂取するのも一つの方法です。

元気で長生きするためには

 21世紀は予防医学の時代だといわれています。そのため、トクホ(特定保健用食品)など、健康に役立つ食品やサプリメントが注目されています。薬は効き目が強いかわりに、副作用というリスクもあります。だから、健康な人が飲むわけにはいきません。したがって、効き目がマイルドですが、副作用がなく習慣的に長く続けられるものが大切なのです。

 最近、アルツハイマー病はアミロイドベータという原因物質が関わっていることがわかってきています。これは凝集といって、べたべた固まって沈殿する性質がありますが、試験管の中では、りんごポリフェノールはその作用をとても強く抑えることができます。その原因物質が脳にたまりにくくなるという意味では、アルツハイマー病予防の有力物質であるといえます。現在研究中ですが、この他にも活性酸素が関係する病気に対し、りんごポリフェノールの予防作用に可能性が広がります。

 実は、長生きするために一番大切なのは生きがいや生きる目的があることです。家族のことや、仕事のこと、人によって価値は違うと思いますが、生きていることがハッピーと感じられることです。そのためにはやはり健康でなければいけません。食事と運動に気を遣い、年をとっても、健康で生きがいのある生活を送るために、りんごポリフェノールのような成分が役立つのではないでしょうか。

※1 変性疾患...細胞や組織などが徐々に変質し、ついには死滅・脱落して機能を失う疾患の総称。
※2 SOD...スーパーオキシドディスムターゼ(Super oxidedismutase)。細胞内に発生する活性酸素を分解する酵素。
※3 Mn-SOD...マンガン-SOD。SODにマンガンが結合したもので、ミトコンドリアに局在している。ミトコンドリアはATPを産生し、エネルギーを作る際、活性酸素が発生するためそれを分解する役割を果たしている。